“1弦のB♭の音だけが、抜けない・・・そりゃ、かなりマズいだろ・・・。” と四苦八苦していた、午前中の話。 当店では埼玉県内の中学校や高校の吹奏楽部のコントラバスの修理・調整もさせていただいていて、その楽器も中学校の吹奏楽部の楽器。 吹奏楽では『B♭』の音を使うことが非常に多いので、この音が綺麗に出せない楽器に仕上げてしまうと、困るのは演奏する子供達です。 楽器を調整する際に『音が抜けない』という表現は多く使われますが、音が抜けないという意味には、『音が篭る(こもる)』と『音が(他の弦と)共振する』の大きく二つの要因があります。 簡単にいえば、その二つを聞き分けて適切な処理をすれば、音抜けの悪さは解消されます。 さて今回の楽器は、『音が(他の弦と)共振する』という問題が音抜けの悪さの原因です。 そこで、実際に弾いている『B♭』の周りに付いている響の中から、他のどの弦の、どの音域が共振しているのかを聞きとります。 今回は4弦、一番太い弦が共振していたようなので、4弦の、1弦で『B♭』を弾いたときに共振する音域の響だけを抜き取るように、駒を微妙に削って調整します。(ウルフトーンを消す作業と同じ要領です。) うまく駒を削ることができれば、4弦の音色を変化させることなく、また1弦全体の音色を変えることなく、『B♭』だけの音抜けを改善することが可能です。 駒には、人間でいうところの『つぼ』のようなものが、あるのです。 音を変化させる技術も重要ですが、その前に、音を聞き分ける技術も必要になってくるので、楽器の調整という作業は、地味なわりに、意外と疲れます。
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