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金魚の飼い方と、コントラバスと。

 店先で飼っている金魚は『土佐錦魚(とさきん)』という高知県の天然記念物でもあります。

 一般には『土佐錦・土佐金』という表記が多いですが、正確には『土佐錦魚』という名称(表記)です。

 希少であり、また美しい金魚なので愛好家も多く品評会も盛んで、インターネット上にも『いかに美しい土佐錦魚を育て上げるか』という記事が盛んに多く見られます。


 私などは、

“別に、品評会に挑戦したいとも思わないから、とにかく健康に育てば良い。”

 と思い、色々とネットで飼育のコツなどを探してみたりするのですが、どれもこれも品評会に出品するような土佐錦の飼育法ばかりが目につきます。 実際に『初級者向けの普通の飼い方』などの記事は、全くありません。

 そうなると、“普通の金魚のような飼育方法はダメなのか?” と不安になってくるのですが、私の場合は、過去に幾つかの品種の金魚を飼育した経験もありますので、

“まぁ、上手くバランス良く飼育すれば大丈夫だろう。”

 と割り切ってしまいます。 しかし、こういう超ハイレベルな飼育方法ばかりの記事が乱立してしまうと、それこそ土佐錦魚の飼育に挑戦することに壁を感じる人が多くなるような気もします。

 まぁ・・・色々な金魚の品種の中でも、土佐錦魚は特に病気や環境の変化に弱い、軟弱な品種であることには、間違いないようですが。



 コントラバスにしても、『オールド楽器(約100年以上前に作られた古い楽器)信仰』は今でもありますし、『〇〇ではないと、ダメだ!』とか、製作国であったり価格であったり、なんとなく心が萎縮するような言葉が、インターネットの中でも、実際の音楽生活の中でもあるようです。

 楽器の個体差にしても、演奏する音楽のジャンルにしても、演奏者の想いにしても、それによって、必要な(求める)楽器の立ち位置は変わってきます。

 自動車でいえば、どんなに『フェラーリが最高!』と言ってみたところで、農作業には使えませんし、建設現場で資材運搬にも使えません。

 自動車には適材適所があり、その適材適所において『本当の価値』を見いだすわけで、それは楽器も金魚も同じであることを忘れてはいけません。

 どこか一つの価値観が全てを支配することは、ありえないのです。



 最近は特にインターネットには情報が溢れかえり、確かに有用な情報も多いですが、その全てが自分にとって有用とは限らないということは一般にも言われていますし、それはコントラバスについても同じことです。



 私が過去の記事(Facebook)で “この楽器は、なんとも幸せものだ。” と感じたと書いたのは、おそらく彼が死ねばバイオリンはゴミとして焼かれるであろうし、バイオリンが先に壊れてしまったら、おそらく彼は生きる気力を失うのだろうと感じました。

 そこの、命の共有というところまで突き詰めた関係を築けた楽器というのは、なんとも幸せものだ。

 と、感じたわけで、それは単純な価値基準では言い表すことは不可能だと思うのです。




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