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過去の『解説のようなもの』から その3

Balázs Ákos

 今回入荷した『バラス・アコス(Balázs Ákos)』というブランド、実は、初めて手にしました。

 一応、個人製作者ということになっていますが、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバスと全てのラインナップを揃えて、さらにそれを安定供給しているというのですから・・・『個人』というよりは厳密には『弦楽器メーカー』なのかな・・・と、思ったりもしますが、情報が少ないので、なんとも言えません。

公式HP

日本の代理店のHP

 今回の楽器の特徴を、あくまで私個人の視点から紹介させていただきます。

 まず、表板と裏板の削り出しの手法としては、基本に忠実に削りあげたような印象を受けました。

 軽く叩いてみた感触としては、どうも標準的な適度の厚みで削り出されているようで、私が個人的に製作をするときに特定の音色を狙って削りあげるような、何か『個性』を持たせるような削り方はしていません。

 塗装に関しては、最近のイタリア系や、グリガなどのルーマニア系の楽器よりも塗装は厚めで、わりと柔らかいニスを使用しているところから、豪快な低音を狙うというよりは、全体的にバランスの良い落ち着いた音色の低音に狙いがありそうです。

 一つ特徴的なのが、楽器の横板が下に向かって幅広になっています。

 楽器の中央部分では、4弦楽器では標準に近い20.5cmの幅で、最下部であるエンドピンのあたりでは22cmの幅になりますが、これは5弦楽器の標準的な横板の幅になります。

 コントラバスの『低音』を考えた場合、音量を求めるのであれば、表板(&裏板)の幅を広げる必要がありますが、音の深さを求める場合には、横板の幅を広げることで低音に深みを持たせることができます。

 ただ、単純に楽器全体の横板の幅を広げてしまうと、今度は中音域や高音域の音の抜けが悪くなり、全体的に音の輪郭のハッキリしない楽器になってしまう可能性があります。

 それを回避するために、コントラバスという楽器の中で低音域が作られる楽器の下の方だけの横板を広げて、低音域だけ適度に深みを持たせるような設計になっています。

 弦長も105.5cmと、ここ最近(15年ぐらい?)の新作コントラバスに多い104.5cmや105cmよりも若干長くなっていますが、もしかしたら5弦楽器のような、いわゆるフルサイズ(ヨーロッパ基準4/4サイズ)に近い低音を求めての設計なのかもしれません。

 

 

 総じて、この楽器の感想としては、設計上は非常にバランスが良く扱いやすい楽器として作られているようです。

 

 さて、この楽器は、あくまで中古楽器ですので、使用の際における傷などがある程度ございます。

 そこは『歴戦の勇士の証』と受け止めてやってください。




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