ORIENTE HO-38
1992年製の『HO-38』が中古で入荷しました。
1990年代前半の頃といえば、まだ幾つかの国内メーカーがコントラバスを製造し、逆に海外のメーカーとなると、ドイツのルブナーやカール・ヘフナーなどが一般的で、超高級品として、これもドイツのペールマンがあり、あとは個人製作者の楽器が輸入される程度で、現在のように多くの海外メーカーが乱立するような状況にはありませんでした。
そのような中で、この『HO-38』は日本国内でのオール単板の楽器としては最も低価格で発売されていた楽器で、全国の中学・高校の教育現場やアマチュア演奏家の間で圧倒的な支持を得てきました。
この『低価格』は、他の国内メーカーよりも品質を落として採算を取る手法ではなく、品質を落とすことなく、ある意味、採算度外視した価格設定で、発売当時、オリエンテの親方である東澄雄は同業者から “いくら何でも、この品質でこの価格は安すぎる!” と非難を浴びたほどでした。
ただ、東澄雄は、そこまで身を切ってでも『教育現場に、少しでも品質の良いコントラバスを供給したい』という強い思いで作り、世に出されたのが、この『HO-38』です。
さて、今回入荷した楽器は非常に状態が良く、そのまま販売することも可能でしたが、なにぶん25年前の楽器なので、現代に合うように少し手を加えてあります。
まず、糸巻きをオリジナルから、チューニング精度が高く、現代ではスタンダードなもの(ドイツ製)に変更しました。
駒も新しいものに交換してあります。
楽器の最下部、テールピースの掛かる部分『緒止(おどめ)』は痛みが激しかったので、これも新しいものに交換してあります。
指板に関しましては、状態が良かったので手を入れていません。
弦長は106cmと少し長めです。
現在の一般的な105cm程度の弦長は、2000年頃から広く採用されるようになり、オリエンテの現行品も弦長は105cmを標準としています。
それ以前の1990年代までは、わりと106cmの弦長が主流だったように思います。
この楽器の前オーナーは、チェロのアマチュア演奏家で、その当時(1992年頃)
“ちょっとコントラバスに挑戦してみよう。”
と思い購入されたようです。
その後、買ってはみたものの・・・と、この楽器はあまり使われることなく、大切に保管されてきた、ということです。
この楽器の音の傾向としては、さすがに長年眠っていた楽器ですので、ちょっとまだ眠たい感じ(?)の音を出していますが、少し弾き込めば、すぐに目を覚ましてくれると思います。
私が調整した感触ですと、どうも『ドーン!』と低音を出す楽器というよりは、柔らかくて太い低音を出すのが得意な楽器なようです。