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楽器の容積は測れるのか?

 職人同士の会話は、時にとんでもない方向に飛躍をする。


 Orienteの二代目と電話で話していて、要件が済んだ後には、いつも雑談となる。

 雑談といっても、その内容は、ほとんどが技術論。


 ふと『楽器内部の容積を、どうやったら測れるのか?』という話題になる。

 あれやこれやと考えて、最終的に『楽器内部に水を入れて、水の入った量を計測する』という答えに至る。


 もっとも…“それ、親方が絶対に激怒するわ。”と言いながら、“でもまぁ、『測る』と言うなら、それが一番簡単で確実なんだろうなぁ。複雑な計算式も必要無いし。楽器は壊れるけど。”と、二人して笑う。



 私とOrienteの二代目は、昔からこのような一見無駄とも思える、くだらない議論を回し続け、そこから出たアイデアを新作や既存の型番の楽器の改良にあててきました。


 年末の仕事納めの日には、毎年、Orienteの事務所で日付が変わる頃まで酒を飲みながら盛大に議論を交わしました。


 思考を回す。

 思考を回し続ける。


 思考をやめた職人は、もはや〈職人〉ではなく単なる〈作業員〉になってしまいます。



 Orienteで修行していた頃は、毎日のように二代目とは〈無駄な議論〉を交わしてきましたが、私が独立開業してからは、年に数回ほどに減りました。

 だから久しぶりに会った時などは、挨拶を含めて10秒後には、いきなりトップギアの、周囲が理解できないほどの難解な技術論が、私と二代目の間で繰り広げられます。

 いつも、お互いの近況報告などは、後回しです。





 うん…でも『楽器内部の容積を測るには、中に水を入れる』は、ネタとしては、なかなかのブラックユーモアですね。

 良い子は真似をしないでください。



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