この店のある埼玉県所沢市近辺には、多くの高校があって、周辺の高校から吹奏楽部員の子供達がやってきます。 楽器の調整をしたり、弓の毛替えをしながら、“最近、練習はどう?” ・“部活は楽しい?”などと、私は子供達に気軽に質問をします。 すると子供達は、“なかなか後輩の指導方法が上手くいかない。” とか “うちの顧問は滅茶苦茶だ。” とか、ポロポロと、愚痴とも不満ともつかない、素直な想いを話してくれます。 私は子供達にとって顧問でも無いし、外部講師でも無いし、先輩でも無いし、親でも無い。 でも音楽には詳しくて、楽器にも詳しいオッチャン。 この不思議な距離感が子供達に安心感を与え、“この人なら部活の愚痴を言っても大丈夫。” となるようです。
吹奏楽部って基本的に大所帯で、なんだかんだと人間関係も複雑で、子供達は大なり小なり人間関係のストレスを抱えながら、一所懸命に練習をしています。 そのような中で “絃バス屋のオッチャンになら、なんでも話しても良い。” という関係性を築き上げて大切にしていくことは、吹奏楽に関わっていく上で重要なことだと感じています。 しばらく前にも、とある高校の3年生と話をしていた時に、“後輩が、合奏中にコントラバスの陰に隠れてスマホをいじっている。” という相談を受けました。 “うわぁ〜。オッチャンの時代には、絶対に無かったわ〜。” と驚いたり笑ったりですが、“そこで単純に叱りつけるのは簡単なんだけど・・・必要最低限に叱りつつも、もっとコントラバスを好きになってもらえるような、何か切っ掛けを見つけてあげることも大切なのかなぁ。” とアドバイスをしてみたり。 10代の、放出しきれない量の熱いエネルギーを当店で少しガス抜きをしてもらいつつ、“君の使っている楽器は、ちゃんと君の想いに応えてくれるから、しっかりと向き合ってあげなさい。” と激励をして送り出す。 私が若い頃に、そうやって同じように楽器屋さんに支えていただいたように、今、私も微力ながら吹奏楽の世界で、子供達と関わっています。 それにしても『楽器の陰に隠れてスマホ。』って・・・そういう時代かぁ・・・。