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ちょいと、久しぶりに毒を吐きます。

(コントラバスとしては)あまり高価ではない楽器を持ち込まれたときに、オーナーから“こんな安い楽器で申し訳ありません・・・。”と開口一番で謝られてしまったことは、数知れず。  『安い楽器を職人に修理させることは恥ずべきこと』のような価値観は、誰が広めたのでしょうか?  私、その『安い楽器』を作り続けてきた、張本人です。

 その昔、“オリエンテは量産品だから、どうせ手抜きをして作っているのだろう。” と言われたこともあります。    その昔、バイオリン職人に “コントラバスなんて、楽器ではなく、『木の箱』を作っているようなものだ。” と言われたことがあります。

 その昔、職業音楽人の友人(?)から、“楽器を作るだけの人間に、音楽の何がわかるの?” と言われたことがあります。    その昔、クラシックの演奏家が “ジャズなんて、どうせ、たいして弓を使わないピチカート(指で弾く奏法)ばかりなのだから、そんなに緻密な調整なんて必要ない。” と話すのを聞いたことがあります。    その昔、ジャズの演奏家が、“ロックなんか、どうせデカイ(大きな)音が出れば、それでいいんでしょ?” と話すのも、聞いたことがります。      そしてロックな演奏のオーナーが来店すると、申し合わせたように “こんな楽器で、申し訳ないです。” と、私に楽器を差し出します。  

 いつもは忘れているというか、心の底に沈めている想いが、たまに思い出したかのようにモヤモヤと浮き上がってきます。  ちなみに、当店の火鉢の前に飾られている大きな絵は、新進気鋭の若手画家が、ロシアのロックバンドを題材にして描かれたものです。 https://lorazombie.com      『絃バス屋』という店の名は、別に『弦バス』という言葉を忌み嫌う人々に対しての当てつけという意味ではなく、職人としての生き様を、そのモヤモヤの中に身を置き続ける意味も込めて、あえてスラング的な言葉を店の名に込めました。  『音楽は世界共通言語』というのは、嘘ですか?  『音楽に国境はない』は嘘ですか?  『弦バス』という名称を含んでいるだけで、当店を否定されますか?  そんなことを思い続けて。      『人はうわべを見るが、主は心を見る。』などという言葉もありますが、音楽というものは、ジャンルでもなく名称でもなく、中身・・・心だと思うのですが。  はてさて。      それやこれや、このゴチャッとして、モヤッとしているのが『絃バス屋』というわけです。





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