先日、とある高校の吹奏楽部のコントラバスが点検・修理に持ち込まれました。
そこで少し気になったこと(気が付いたこと)を記事にしてみます。
使用されている弦は、ピラストロ社のオリジナル・フラットクロムです。
中学校や高校の吹奏楽の世界でオリジナル・フラットクロムがよく使用されるようになったのは、ここ10年ほどでしょうか?
“中学校や高校の吹奏楽でオリジナル・フラットクロムを扱うのは(演奏技術的に)難しいのではないか?”
そんな話題は、よく当店でなされることですが、今日は、その話題ではありません。
私の個人的な感想ですが、オリジナル・フラットクロムは、意外と早い段階で弦の巻きが崩れてくる印象があります。
もっとも、巻きが崩れたからといって、それがノイズとなってトラブルの原因になることはないという不思議な弦でもあります。
駒の部分で、弦の巻きが崩れる。
その結果、何が起きるのか?
弦の巻きが崩れることで、摩擦力が大きくなります。
そのため、調音のために弦を巻き上げるたびに、少しずつ駒をネック側に引っ張ってしまいます。
最終的に、駒の足が浮いたり、駒が反ってしまう原因になる。
もう一つ、最近気がついたことですが、オリジナル・フラットクロムの弦の巻きが大きく崩れたまま使用した場合、駒の溝を削ってしまうのではないか、という仮説。
写真の楽器の駒は当店で立てたもので、他の職人は一切手を触れていません。
私は、こんなに深く溝を作った記憶は全くありません。
そこでふと、これも先日、常連のお客様の楽器の駒の溝が深くなっていたことを思い出します。
その楽器に使用していた弦もオリジナル・フラットクロムでした。
確か使用期間は2年ほどだったと思います。
当然、使用期間によって状況も変わりますが、まず、オリジナル・フラットクロムが駒の上で巻きが崩れやすいということは事実。
そして、学校の楽器は定期的に弦を張り替えられるわけではない、という事実。
今回の楽器も、最終的に駒の調整も弦の交換も無しで納品しています。
だから、張り替えて1年ほどでは駒にダメージを与えることは無いですが、弦の巻きが大きく崩れた状態でさらに長期間を使用すると、弦がヤスリのような状態になり、少しずつ駒の溝を削ってしまうのではないか…ということが考えられます。
私自身、検証実験をしたわけでは無いので断言できないですが、状況証拠を並べて考察すると、おそらく大きく的を外した答えでは無いように思います。
オリジナル・フラットクロムに限らず、巻きが崩れた弦は駒の溝を深くする。
この仮説については、継続して調査していく必要があるかと思います。