日本を代表するコントラバス用ピックアップマイクYAMAHIKOの旧型と現行型。
ネジを取り付ける部分が4箇所なのが現行型で、2箇所なのが旧型。
仕様変更の時期は不明ですが、私が仕事始めた頃(30年ほど前)は旧型でした。
感覚として、20年ほど前に現行型に仕様変更したような印象です。
今回、これまで店の楽器には旧型を搭載していましたが、現行型に交換します。
これで、Wilson K1とのサウンド比較が、より明確になります。
実は、YAMAHIKOは、現行型よりも旧型の方が柔らかいサウンドです。
現行型の方が、音の解像度が高い。
そして出力(音量)も旧型よりも大きいという印象です。
音の解像度の精度の問題で、おそらく結果的に、現行型よりも旧型の方が柔らかいサウンドの印象を受けるようです。
ところで、YAMAHIKOを取り付ける方法の技術論。
YAMAHIKOの取扱説明書では、駒の上側の軸棒を受ける穴の直径は『6.6mm〜6.8mm』と表記されています。
ところが、YAMAHIKO本体の軸棒の太さは6.5mmですから、この説明書通りに穴を空けると、(左右の足の穴の太さを足すと)0.2mm〜0.6mmの余分な空間ができてしまいます。
穴に余分な空間ができると、楽器に弦を張ったときに、駒が上下左右(前後左右?)に動いてしまう可能性があります。
だから当店では、YAMAHIKO本体の軸棒と同じ、6.5mmの穴を開けています。
この説明書は、おそらく『そこそこ木工加工ができるであろう人間』を対象に表記されているように思います。
ある程度、駒の加工精度を犠牲にしてでも、確実に取り付けられる方法。
このYAMAHIKOの説明が良い悪いではなく、YAMAHIKOにしてもWilsonにしても、高精度でピックアップマイクを取り付ける方法は、最終的には職人の技術次第です。
このようなピックアップマイクを正確に取り付ける技術も、楽器製作や修理技術と同様に、簡単に身につけられるものではありません。
長い時間をかけて研究と修練を積み上げなければ、結果は出せません。
とはいえ、このYAMAHIKOを取り付ける技術も演奏家から見えることはありません。
そのYAMAHIKOが高い精度で取り付けられたのか、低い精度で取り付けられたのかは、演奏者が職人を信頼してくださり、また依頼を受けた職人が誠実に仕事をすることで〈答え〉とする以外にありません。