さて、ここ最近、また人気が出てきたというか、目にすることの増えてきた『Underwood(アンダーウッド)』というピックアップ・マイク。
こちら、登場は1970年代という、コントラバスには定番のピックアップですね。 今回は、その Underwood を使用する際の駒の調整方法を、ご紹介。 ちょっと難解かもしれませんが・・・。 Underwood、私が修行を始めた20年ほど前は、けっこう使われていたような気もしますが、2000年代に入ってコントラバス用のピックアップが多く開発されるようになって、その頃、ちょっと表舞台から姿を消したように思います。 ところが近年、また多く目にするようになります。 というのも、コントラバスのピックアップ2種類を同時に使用する人々から、この Underwood は支持されているようです。 さて、この Underwood の、一時期の人気低迷の理由は、おそらく2つあります。 一つは『出力が弱い(=音量が小さい)』ということ。もう一つは『音が硬い(=ピエゾ特有のカリカリした音)』ということかと思います。 私も一年ほど前までは、この2つの弱点は、プリアンプなどの外部機器で補うべきだと考えていました。 ところが、ある日、“これ・・・駒の調整方法で、ある程度は解消できるのでは?” と思いつき、研究してみました。 まず、弦の振動が、どのようにピックアップへ伝わっているのかを考えてみます。 シンプルに考えてみると、写真のように駒の上から伝わる振動を拾います。
そこを、あえて、駒の足の方からの振動を積極的に集音するように、駒を調整してみます。
これ、正解でした。 駒の上部よりも、足の方からの振動を多く集音させたほうが、音が太く、また音量も上がります。 理屈としては、先日紹介させたいただいたように(写真5枚目)単純に弦からの最短距離に惑わされず、弦の振動を多く通す道から振動を拾った方が、合理的というわけです。
だから、『基本的に足からの振動を集音して、音の輪郭や硬めの音が必要なときは、上部からの集音の割合を増やす。』という調整方法をしてから、必要に応じて左右に音を振ってやる(音の響きを引き出す)と、意外と自然な音が出せるようです。
ただ、楽器そのものの調整方法との兼ね合いもあるので、そこは職人の感性と腕次第・・・という部分も多いかと思います。 私が普段から多くのコントラバスを調整して感じていることは、“どこまでが楽器(コントラバス)の領域で、どこまでが外部機器(プリアンプなど)の領域なのか?” と、そこの〈読み〉というか見極めが重要で、そこを間違えると、最終的にオーナーの望む音色に到達できない・・・ということです。 初めから外部機器に依存させてしまえば、ピックアップを取り付けて、 “後はプリアンプなどの機械で音の調整をしてください。” と言ってしまえば良いのですが、私自身、プリアンプなどの外部機器を作ったり調整・修理をしているわけで、『外部機器での音の調整の限界』は身に染みて感じているわけですから、そう無責任なことは言えません。
だから逆に言うと、どんなに高性能な外部機器を作ったとしても、楽器の調整が不完全ならば、絶対に良い音は出ない、と言うことも知っています。 そして『楽器の調整』というものは、単純に『楽器本体が良い状態』というわけではなく、『取り付けたピックアップとの相性が非常に良い状態』であり、なおかつ『楽器本来の鳴りが完全の状態』という状況である必要があるわけです。 それは、Underwood に限った話ではなく、全てのピックアップに言えることで、またピックアップの種類と同じだけ、楽器の調整方法は変わってくる、ということです。