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SLB300のノイズ問題について

最近、YAMAHAのサイレントベース SLB300のノイズ問題についての相談を幾つか受けました。


 というわけで、私なりの考察を書いてみます。

 とりあえず、YAMAHA SLB300 の公式HPのURLを貼っておきます。

“SLB300は、ノイズが多い。”

 私は初めて相談を受けたときに、“それは故障では無いのかな?”と思ったのですが、詳しく話を聞いてみると、そのノイズは、ホワイトノイズでした。


 〈ホワイトノイズ〉というものは言葉では非常に説明が難しい。

 何かに置き換えて表現するならば、『扇風機の風切り音』に近い音が、スピーカーから発せられるような状態です。


 この件については何人かから同様な相談を受けていて、楽器を購入した販売店やYAMAHAに問い合わせても解決できなかったようです。

 特にYAMAHAからの返答は“故障ではなく、そのような仕様です。”と返答があったそうです。




 『ホワイトノイズが発生する』という条件には、幾つかの原因があります。


 一つは、電気回路の問題。

 電気回路を設計する際に、うまく回路を描けないとノイズを発生させる原因になります。


 もう一つは、使用されている部品の性能の問題。

 コンデンサーや抵抗器には、そもそも大なり小なり、ノイズが存在します。

 例えば電解コンデンサーなどは汎用品とは別に『オーディオ用』と称されたものがあります。

 一般的に、オーディオ用のコンデンサーは、ノイズが少ないです。

 そこから、Nichicon KA や東信工業 UTSJ のようなハイグレードなコンデンサーは、さらにノイズが少ない。


 抵抗器であれば、設計の古いカーボンコンポジット抵抗よりも、最新鋭のTAKMAN REYのような金属皮膜抵抗の方が、圧倒的にノイズが少ない。


 そうやって、使用される部品の種類によっても、ホワイトノイズの大小は決まってきます。



 そして、上記二つの組み合わせでもありますが、適切に電気回路を描き上げないと、回路の問題でのノイズ発生と、部品固有のノイズの足し算で、盛大なホワイトノイズが発生することがあります。



 今回、SLB300を分解して確認してみましたが、電解コンデンサーは汎用品(工業用)を使用していたので、ある程度のノイズは仕方がない。

 そのほかは、ほとんどがチップコンデンサーやチップ抵抗という小型の表面実装型の部品が使用されていました。



 SLB300のホワイトノイズ問題は、おそらく使用されている部品の問題というよりは、電気回路の複雑さ故の問題のような気もします。


“あの大きさで、あの性能を搭載させようと思ったら、そりゃぁ電気回路に無理があっても不思議ではない。”

 といった感じでしょうか?




 結論として『電気回路を改良して、ノイズを軽減することは不可能』ということになります。

 これが、SLB200のような古典的なシンプルな電気回路であれば、コンデンサーをハイグレードなものに交換することでノイズを軽減させたりも可能です。

 最新鋭というものも、なかなか難儀なものですね。




 それでは、SLB300のホワイトノイズ問題をどのように解決するのか?

 それは、楽器本体の鳴り(音量)を大きくすれば良い。

 まぁ…いつもの通りの駒の調整で対処する以外に方法がありません。


 例えばWilsonであったりYAMAHIKOのような、そもそも圧倒的にノイズの少ないピックアップでは関係ないですが、REALISTのようなホワイトノイズの多いピックアップの場合には、とにかくピックアップに集音させる振動を大きくすることで、“あまり音量を上げなくても大きな音が出るから、ホワイトノイズが気にならないよ。”という状況を作り上げます。


 つまり、音量を上げるとホワイトノイズも大きくなるのだから、入力される音量レベルを上げれば、機材の方で音量を上げる必要がなくなります。


 当然、ホワイトノイズ自体は消えることがないので、完全に解決とは言い切れませんが、現状では、これが適切な処理だと思われます。



 それと、ヘッドフォンでサウンドを聴くと、当然、ホワイトノイズは気になります。

 




 本来、ベースアンプで出力をするもの。

 先日の投稿にもありますが、ベースアンプで使用しているウーハーユニットは、高音域が苦手です。

 だから、実は多少ホワイトノイズが多めの楽器でも、あまりノイズが気になりません。


 ところが、全帯域を再生するヘッドフォンなどを使用すると、盛大にホワイトノイズが聞こえてきます。


 このあたりの使用環境の問題というのも、ノイズが大きく感じてしまう理由の一つではないのかな、とも思います。



 電気回路でホワイトノイズを処理しようとすると、ホワイトノイズの周波数帯域をカットすればノイズ除去できますが、それでは音に明瞭さが失われてしまいます。





 当店のプリアンプは圧倒的にホワイトノイズが少ない。

 それは電気回路の工夫もありますが、特にハイエンドモデルで使用されているオペアンプのOPA627は、あの超高級オーディオ『Mark Levinson』でも使用されています。


 それぐらいの品質の部品を使用することで、徹底的にホワイトノイズを除去しているのです。




 現状として、SLB300のホワイトノイズ問題は“うまく付き合いながら対処していくしか方法はない。”といったところでしょうか。




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