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PRESTO という弦

ちょっと変わった弦の、ご紹介。

 『PRESTO』というドイツのメーカーの、『Nylonwound(ナイロン ワウンド)』という種類の弦です。

 いわゆる『ブラック ナイロン』とは、ちょっと違うようです。


 このメーカーのHPを見てみると、どうもコントラバスの弦の専門メーカーなのでしょうか? コントラバス以外の弦は、全く出てきません。


 ここ最近、立て続けに数件の『ガット弦に近いイメージの弦は、ありますか?』との質問を受けたので、多少なりとも、何かの参考になれば・・・と、ご紹介します。



 元々は、この『PRESTO』という弦は、しばらく前の話ですが、私は常連さんによって “この弦を張ってくださいな。” と持ち込まれて、初めて手にしました。

 どうも、この弦を日本国内で安定的に取り扱っているのは、とあるロカビリー&ロック系のお店だけらしいです。 (もっとも、インターネット上に掲載されていない店も、もしかしたら、あるかもしれませんが。)


 常連さんと、興味津々で楽器に弦を張ってみます。

“あれ? 『スラップに最適!』みたいな勢いで販売しているようだけど・・・これ、凄く音の響きが良くありません?” と、常連さんと驚いたわけです。


 そこで、詳しく調べてみると、常連さんが持ち込んだ弦は『Ultralight』という、一番細くて柔らかい弦です。

“もう少し太い弦なら、もっと響きに深みが出せるかも。”

 と思いながら、しばらく、このネタは寝かせていたわけです。



 さて、この『Presto Nylonwound』という弦には、『Medium』『Light』『Ultralight』の3種類がありますが、公式サイトで確認をすると、一般的なコントラバスのスチール弦と同じような太さの弦は『Ultralight』で、『Medium』は極太(ごくぶと)の、まさにガット弦を彷彿(ほうふつ)させる太さです。

 実験するにあたって、本来であれば、やはり『Medium』に挑戦をしたいところですが、“この弦を張るのに、駒とナット(指板の上の、弦が掛かっている部品)の溝の幅を広げると、あとで普通の弦に戻すときに再調整が面倒くさいなぁ・・・。” ということで、その間をとって、今回は『Light』を入手してみました。 ドイツから。



 実際に弦を張って楽器を鳴らしてみた感想としては、やはり私は好きです。 このまま、この弦を使い続けたい感じです。

 あくまで個人的な感想ですが。




 面白いもので、その音質の例えを『ガット弦か?』と問われると、断じてガット弦ではない。

 かといって『(一般的な)スチール弦か?』と問われると、スチール弦ではない。

 じゃぁ、構造的に考えても『ブラック ナイロン弦なのか?』と問われると、ブラック ナイロンの感じとも違う。

 総じて、『PRESTO の音』としか言いようがありません。


 それでは『非常に個性的なのか?』と問われると、そこまで自己主張が強いわけでもないし、かといって個性のない中庸な感じもしません。


 もう “うちの店に来て、自分で弾いてみて確認をしてくれ。” と言いたくなるぐらい、ちょっと簡単に言葉では表現できない味わい深い弦です。

 弓で弾いてみても、味わい深さを感じます。

 ピックアップ マイクを通してアンプから音を出してみても、いい感じです。



 音に芯が少ない感じは、ガット弦に似ているのですが、その代わり、非常に音の輪郭が明瞭で、そのあたりはスチール弦に近い印象がありますが、その『音の輪郭』も金属っぽさが全くないので、『音に芯が無く、輪郭はある』という、ちょっと特殊な響きでありながら、しかし、そこに違和感は感じません。

(一般的なブラック ナイロン弦は、どちらかというと、わりと音の芯が強いイメージがあるのですが、私の思い違いでしょうか?)



 楽器の調整方法としては、以前に紹介させていただいた『ガット弦の調整方法』ほどは、難しくありません。


 ただ、一般的なスチール弦よりも、さらに『ゆったりと楽器を鳴らす』というイメージで調整するのが良いようです。 そのあたりは、ガット弦に近い感覚で調整すれば良いかと思います。




 この弦の最大の難点は、おそらく楽器を完璧な状態にまで調整をしないと鳴らしきれない、ということかと思います。 楽器自体が『ちゃんと鳴る(適切に鳴る)』状態にしておかないと、あまり、この弦の良さは感じられないかもしれません。


 というのも、この弦の特徴でもある『音の輪郭』が明確に出せるような調整がされていない楽器では、単にモコモコと音程感のない楽器になってしまう可能性があります。

 そう考えると、この弦の性能を完全に引き出そうと思ったら、コントラバス専門店に持ち込んで、時間をかけて調整をしながら音を作っていくことを、お勧めします。






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