コントラバスのペグ(糸巻き)を分解清掃する。
ネックの修理の依頼を受けた際に、ペグの動作が悪かったので“取り外すついでに、メンテンスもしておきましょう。”ということで、分解しました。
分解をすると、金属の粉が手元に落ちています。
色々と確認すると、大きな真鍮製の歯車が摩擦で摩耗しています。
油切れを起こした後に、油を差さずに使用し続けたので摩擦力が増大してしまったようです。
擦り減った歯車と正常な歯車は、写真でも確認できます。
摩耗した歯車は、もはや修理不能ですが、今のところ、特に使用に問題はないようです。
分解をして、歯車付近に付着した埃や金属粉をパーツクリーナーで清掃します。
そして再度、組み上げる。
組み上げる際に、普段見えない部分の摩擦が起きるところには、薄く油を差しておくとペグの動きが滑らかになります。
日頃の整備で、ペグに油を差す際にスプレー式の潤滑油は手軽ですが、推奨できません。
思った以上に油が空気中に飛散しているもので、目に見ない部分で間違いなく楽器に油が付着します。(Orienteでは、スプレー式は使用禁止になっています。)
楽器に付着することでニスが溶けることは無いと思いますが、逆に修理をした際に、新たに塗るニスが油によって弾かれて塗装に斑(むら)が出る場合があります。
だから少々面倒くさくても、スプレー式の潤滑油の使用は控えてください。
油差しで注油する場合には、直径 3mm程度の小さな一滴でも充分だと思います。
仮にスプレー式を使うにしても、油差しを使用するにしても、注油する油の量が多すぎると、ペグのプレートの裏側まで油が流れてしまうので注意が必要です。
また、油は埃を付着させてしまうので、数年に一度は専門店で分解清掃を依頼するのも良いかもしれません。
分解清掃をせずに油を差し続けると、埃も溜まっていきます。
結果的に、油を差してもペグの動きは改善されない場合も出てきます。
ペグの整備などというものは、一度分解清掃をしてしまえば数年は問題なく使えますし、日頃の手入れといっても半年とか一年に一度、油を差す程度のことですから、気の長い時間軸でのスケジュールになります。
ただ、整備のタイミングを逃して使い続けると、一気に劣化し始めます。
『日頃から注意しておくべきだ』とは全く思いませんが、なんとなく頭の片隅に意識を置いておいていただければ良いかと思います。