ふと思い立ち、中学時代の吹奏楽部の1学年上の先輩(男子)の名前を検索してみる。
昔から、とにかく破天荒な男で、 “俺は、ミュージシャンになる!”と言って(小学校時代から)バンド活動をしていて、それと同時に、中学時代から“俺は、美容師にもなりたい!”と言っていました。
高校を卒業して、バンド活動をしながら美容師になる勉強をしているという話を聞いていましたが、その後『アメリカへ渡った』という情報を最後に、音信不通になりました。
そう。
東京都内に、彼の経営している美容室を見つけました。
中学時代からの夢を追い続け、見事に自分の店を開いたという凄さ。
私などは『気がつけば、コントラバス職人になっていた。』というような生き様なのですから、彼の信念の強さには脱帽です。
彼との記憶を探ってみると、20年以上前に、時間を作って二人で会ったことを思い出しました。
西武池袋線の練馬駅で待ち合わせをして、彼がバイクで迎えに来て、ヘルメットを渡されて、私がバイクの後ろに乗って、走り出してから、彼は言いました。
“あ。俺、免許は持ってないから。”
・・・・・・はい、20年以上前の、お話です。
なかなか、破天荒な男でしょ?
そんなことを思い出しながら、その時、彼とどんな話をしたのかを、淡い記憶の中から探り出してみると・・・。
彼は、まだ美容師見習いで、いわゆる下働き。
私も、まだ楽器製作はさせてもらえない下働きの頃で、お互いの近況を話しながら、彼に“お互いに、頑張ろうな。” と言われたことを思い出しました。
あの時代、『お互いに、頑張ろうな。』と言い合える関係だった人間は、おそらく彼一人だけだったと思います。
あの頃、『(現在進行形の)下働きの苦しみ』というのは、彼以外には話したことがなかったと思います。
そもそも『修行の苦しみ』というものも、独立をして絃バス屋を開業するまでは、家族にさえ語ったことは無かったです。
“懐かしいな。” と思いつつも、なんとなく私と彼の生きてきた〈道〉の違いを感じて、“(無理に会おうとするのではなく)会えるべき時に、会えば、それで良い。” とも思いました。
20年前に『お互いに、頑張ろうな。』と言い合って、現在、お互いに自分の店を持ち、家族を守っている。
なんか不思議な気分であり、嬉しくもあります。