私が20年間の修行をしたオリエンテというメーカーは、創業から40年間『教育現場に良質なコントラバスを供給する』という強い想いで楽器を作り続けてきたので、実際、多くの教育現場で使われています。
だから、学校関係からの仕事の依頼を受けると “あ。これは自分が担当して作った楽器だ。” ということがあります。
オリエンテのコントラバスは職人が一つ一つ手作りをしているので、同じ設計図で、同じように作っても、微妙に職人の癖が出てしまいます。
おそらく、オリエンテの職人以外には全く区別はできないぐらいの違いなのですが、オリエンテの職人であれば、パッと見ただけで “ここは〇〇が担当したな。” と個人を特定できるぐらいに見抜けるでしょう。
こうやって自分が担当した楽器を目の前にすると・・・懐かしいでもなく、恥ずかしいでもなく・・・ちょっと不思議な気分になります。
ただ、目の前の楽器を見て、確信を持って言えることは、『私は、修行の手を抜いてはいなかった。』ということです。
もう25年近く職人生活を送ってきて、若い頃を思い出して “いやぁ、あの頃は必死で頑張っていたわ〜。” なんて、思い出に〈色〉を付けて語るまでもなく、目の前にある楽器は、若ければ若いなりに、誠実に、必死で楽器を作ってきた自分の軌跡を感じることができます。
だから、“いやいや若い池田くん、なかなか頑張ってるね♡” と、自分が担当した楽器が修理や調整にやってくると、そんなことを感じたりもします。
不思議なものですね。