コントラバスの製作技術を使い、打楽器奏者としての感性を活かし、オーディオマニアの知識を盛り込んで、カホンという打楽器を作ってみました。 以前から学生時代から付き合いのある古い音楽仲間に、 “コントラバスが作れるなら、カホンぐらい作れるだろ?” と言われていたのですが、時間的な都合もありますが、それよりもカホンという楽器に適した材木が手元に無かったので作れませんでした。 先日、友人の大工から丁度良い材木を譲り受けることができましたので、作ってみました。 まぁ・・・材料を仕入れてまで作るのも・・・と思っていたので。
一応、私生活では打楽器奏者でして、京都時代には中学校の吹奏楽部の打楽器の外部指導員をしていた時期もありますので、当然、カホンという楽器は知っていましたが、実際のところ全く興味はありませんでした。 私自身、どちらかというとラテン系打楽器を主体とした打楽器奏者ですが、カホンの、あの音抜けの悪さには辟易(へきえき)していたタイプで、“カホンよりもボンゴの方が扱いやすい。”と思っています。(普段から、店の一番目立つ場所に2台のボンゴが飾ってあり・・・まぁ、そういう感じです。) そこで、今回製作したカホンのコンセプトは『音の厚みを維持しつつ、高音域の音の抜けを改善した設計。』ということで作り始めました。 大きさは一般的な、高さ約50cm・幅30cm・奥行き30cmというサイズで。
この楽器の大きな特徴は、打面の内側を削ってあるということ。 打面の板の厚みは5mmですが、打面上部から8cmぐらいの部分は厚みを2.5mmまで薄く削ってあります。 この打面上部はカホンの奏法の中で高音域を出す時に叩く場所で、その場所を薄くすることで良い音抜けを得ることができます。 逆に、中心部を叩くと低音が出ますが、そこは厚みを残すことで音が痩せる(やせる)ことを回避できます。 さらに、打面の内側の周囲は3.5mmの薄さに削ることで、楽器全体の音の響きを改善させてあります。 カホンを作るにあたり、色々な海外のカホン製作者のサイトや映像を観て勉強しましたが、打面の内側を削って音に変化を出している製作者は居ませんでしたので、珍しいタイプの楽器かと思います。
カホン独特の濁った音、『バズ』といわれる音の発生装置には、8本のワイヤーを独立して配置させることで、一本一本、張りの強さを変えることで狙ったバズ音を作ることが可能です。
本体背面の低音抜け用の穴は、容積から、スピーカー製作で使用される『バスレフポート計算式』を使用して、130Hzのあたりを増幅するように設計し、低音が〈浮かないように〉と、中心より50mm下げた位置に穴を配置しました。
塗装に関しては、ちょっとアンティーク家具というか、ホットロッド的というか、野性的というか、あまりコントラバス的な発想はせずに仕上げました。 さて肝心のサウンドですが、私には丁度良い感じの音になりましたが、おそらく一般のカホン奏者の方々からみれば、非常に過激なセッティングの楽器に仕上がっているかと思います。 ご来店された際には、話のネタに遊んでみてください。 しかし・・・販売予定は全く無いものです。 ご注文、承りません。